Biochemical and histopathological studies on a mouse brain ischemic model induced by bilateral carotid artery occlusion: comparison with the carbon monoxide inhalation method and other ischemic or anoxic models.

Abstract
マウスの両側総頸動脈結紮(BCAO)によって起こる脳内の生化学的および病理組織学的変化を調べ,BCAOによる致死機構にっいて,虚血モデルとの比較をおこなった.1)雄性ddY系マウス(N=86)は結紮により52%が10分以内に,6%は60分以内に死亡,残りの42%は60分後に両側総頸動脈を切断しても大半がさらに60分以上生存した.2)雄性ICR系マウス(N=96)では77%が10分以内に死亡し,この間の平均生存時間はddY系に比較して短いが,8%は60分以上生存した.3)BCAO後の神経症状として眼瞼下垂,嗜眠,傾斜,回転運動,痙攣が現れた.これらの症状は片側のみの総頸動脈結紮群(N=33)にも70%の高率で現れ,病理組織学的所見でも大脳における浮腫の発生およびアンモン角の神経細胞の虚血性変化が認められた.4)脳内のATPとゲルコース含量は,BCAO後10分以内死亡群でいずれも低下したが,60分以上生存群では変化しなかった.両含量は無処置の断頭放置脳でも時間と共に低下したが,グルコースの低下はBCAOによる死亡群ほど著明ではなかった.一方,CO吸入群では,ペントバルビタール前処置で8分以上生存した場合,両含量ともにむしろ増加し,8分以内死亡例では変化せず,またエーテル吸入致死群でも変化しなかった.5)BCAO後10分以内死亡群と断頭後放置群で,アセチルコリン含量は低下,コリン含量は増加した.60分生存群では両含量ともに変化しなかった.以上の結果は,1)BCAOによる短時間内の致死はおそらく脳虚血に起因するが,致死率や致死時間などの指標は系統間や個体間で大きく変動するので,薬物効果のスクリーニンゲに用いるには注意を要すること,2)BCAOの致死機構はCOやエーテル吸入による致死機構と生化学的に異なっていることを示唆している.

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