PERIPHERAL NERVE CONDUCTION VELOCITIES IN CHAIN-SAW OPERATORS
- 1 January 1976
- journal article
- Published by Japan Society for Occupational Health in Sangyo Igaku
- Vol. 18 (6) , 516-520
- https://doi.org/10.1539/joh1959.18.516
Abstract
振動障害において, 上肢の前腕および手掌部で末梢神経伝導速度の遅延がみられることが二, 三報告されている.本論文では, 右正中神経と後脛骨神経の神経伝導速度を手掌, 前腕のほか, 上腕, 足底および下腿部で測定し, 振動による末梢神経障害の障害部位を検討した.同時に, 電気伝導速度と手指の白化現象, 筋電図所見およびチェーンソーの使用期間との関係を検討した. 対象は, 男子のチェーンソー使用山林伐採労働者17名と, それぞれに年齢が近似する一般男子17名.チェーンソー使用者の年齢は29歳~61歳 (平均46歳), 飲酒量は1日3合以下であった.糖尿病ほか末梢神経障害の既往をもつものはない.チェーンソーの使用期間は2~16年 (平均12年) で1日の使用時間は, 昭和44年までは3~7時間であったが, それ以後はほぼ2時間以内であった.伝導速度を測定した昭和46~47年度は, 12名が年間89~546時間 (平均235時間), また残りの5名が20時間以内チェーンソー作業に従事していた.手指の白化現象の既往は9名に, また上肢の継続的なしびれ感が10名にみられた.筋電図は8名中5名が神経原性の変化を示した. 結果 : 1) 神経伝導速度は, チェーンソー使用者の手掌部の知覚神経伝導速度 (SCV) と残差潜時 (RL), および前腕部の混合神経伝導速度 (MNCV) で有意の伝導遅延を認めた.これらの項目では, 全被検者に対する伝導遅延者の割合はそれぞれ80% (12名), 38% (6名) および43% (6名) であった.これに対し, 前腕, 上腕部の運動神経最大伝導速度 (MCV) とSCV, 上腕部のMNCV, および下腿, 足底部のMCV, RLおよびMNCVではいずれも有意差は認められなかった. 2) 手掌部のSCVでみると, 手指の白化現象の既往をもつチェーンソー使用者で8名中7名に伝導遅延がみられたが, 白化現象の既往のないものでも7名中5名に伝導遅延を認めた, また筋電図検査が行なわれたものは全例が手掌SCVの伝導遅延を示したが, このうち約半数は正常範囲内の筋電図所見を示した.チェーンソーの使用期間との関係では, 伝導速度はチェーンソーの使用年数および年間使用時間 (伝導速度測定年度) のいずれとも有意の相関はえられなかった.しかし両者を比較すると前者との相関のほうが高かった. 以上の所見は, チェーンソー使用労働者に上肢の末梢部に優位な神経障害が起こることを示す.これは知覚系と運動系の両者に認められるが, 前者により著明なように思われた.そこで振動による末梢神経障害の評価法としては, 手掌部の知覚神経伝導速度の測定が最も鋭敏であるように考えられた.また伝導遅延の程度と手指の白化現象とが平行しないことから, 電気伝導速度の遅延は血管系の障害による二次的な変化ではなく, 振動の末梢神経への直接的な作用の結果であるように考えられた.This publication has 0 references indexed in Scilit: