Aging of the Substantia Nigra With special reference to the Marinesco body

Abstract
Marinesco 小体は, 黒質や青斑核の神経細胞核内に出現する好酸性の核内小体で, 肝脳疾患々者や老人に認め易いといわれているが, まだ研究も少なく, その本態も不明である. 今回われわれは, 80例の剖検脳の黒質について, 本小体の出現と加齢ならびに基礎疾患との関係を検討し, 次の結果を得た.1) 黒質メラニン含有細胞数は, 加齢に伴なって有意に直線的に減少した.2) 黒質メラニン含有細胞の核内小体は, 好酸性小体と好塩基性小体とに大別出来, 前者は3亜型, 後者は2亜型に区別出来た. 両者は密接に関係すると考えられるが, Marinesco の原著に従い, 好酸性小体のみを Marinesco 小体とよぶのが妥当と考えた.3) Marinesco 小体は40歳頃より出現しはじめ, 50歳以後の例では量的相異はあっても全例にこれが認められた. また, その出現量は加齢とともに有意に直線的に増加した.4) 肺気腫ないし肺線維症と臨床的に診断され剖検においてもこれが確認された例では, 同じ年齢の対象に比し Marinesco 小体の出現量が有意に多かった.5) 全例の中から, 上記の肺疾患と, 従来, 本小体が増加すると報告されている肝性脳症例を除いた症例について, 本小体の出現量と年齢との関係を再検討したが, やはり Marinesco 小体は加齢に伴って有意に直線的に増加した.6) 以上の点から, Marinesco 小体は, lipofuscin などと同様に, 生理的老化性変化とみなされるべきであるが, ある種の肺疾患や肝性脳症の際に出現量がさらに増加するものと考えた.

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