Abstract
臓器移植に合併する真菌症は重篤で,カンジダとアスペルギルスが大半である.一般に早期診断は困難であるが,確定診断後では既存薬剤による治療効果が乏しいため,高リスク患者では抗真菌薬の予防投与が推奨される.カンジダ症の予防は同種骨髄移植や肝,膵移植などで行われfluconazoleが有効である.アスペルギルス症は同種骨髄移植や肺,心臓移植で高頻度であるが有効な予防法は確立していない.近年真菌の血清診断法の開発,臨床応用が我が国で積極的に行われ,病勢のモニタリングにも使用される.その際に必要な条件には早期診断が可能,病勢と相関する定量性,検体採取と測定が容易で結果が短時間で得られる,などがある.我が国で最も普及している方法は血中(1→3)-β-D-グルカン(BDG)の測定で,自験の真菌性敗血症27例ではBDGは全例陽性で,うち14例は血液培養より早く上昇した.治療奏効例では炎症反応の改善に加えBDGの低下が観察された.侵襲性肺アスペルギルス症の剖検17例の検討では病初期のBDG値は13例(76.5%)が軽度上昇で最終的には全例が陽性となった.本症でもBDGの測定は有用であるが,早期診断法としては十分ではなかった.近年欧州では本症の診断にELISA法によるガラクトマンナン抗原測定が推奨され,PCR法による真菌遺伝子診断も臨床応用が進んでいる.本稿では本症のモニタリングと予防について考察する.

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