Parapoxvirus infection in wild Japanese Serow -A possibility of infection from wild serow to sheep-

Abstract
岐阜県山間地で飼育されていたヒツジに丘疹および膿痂皮を主徴とする皮膚感染症の集団発生が認められ,病理組織,免疫組織およびPCRによりパラポックスウイルス感染による伝染性膿疱性皮膚炎と診断された。同山地に生息するニホンカモシカには,パラポックスウイルス感染症の流行があることから,カモシカの感染材料をヒツジに接種し伝播の可能性を調べた。カモシカ皮膚感染材料を3か月齢幼ヒツジ2例に接種したところ,いずれにも接種後5日目より接部位の口唇に紅斑と丘疹から成る皮膚病変が種々の程度に認められた。1例にデキサメサゾン投与し免疫抑制処置を施したところ,病変の程度が重い傾向がみられた。組織学的には,いずれにしても皮膚有棘細胞細胞質に封入体が認められた。免疫染色では,パラボックスウイルス抗原に陽性反応を示し,PCR法で病変部にパラボックスウイルスDNA特有の235bpのバンドが検出された。ニホンカモシカのパラボックスウイルス感染症は,免疫力の低い幼ヒツジに対して伝播可能であり,免疫抑制処置により皮膚病変は重度になることが推測された。これらのことは家畜の感染症の流行に際して,野生動物の存在が無視できないことを示唆している。