The Clinical Differentiation of Senile and Vascular Dementias

Abstract
老年者にみられる痴呆中もっとも大切な老年痴呆, 脳血管性痴呆および両者の混合型痴呆を, 痴呆の出現とその経過, 特に脳血管性発作や神経症状出現との時間的関係すなわち temporal profile という面から分析して次の結果を得た.1) Temporal profile から, I, II, IIIの3型に大別し得たが, 剖検例との対比などから, I型は老年痴呆, II型は脳血管性痴呆, III型は混合型痴呆と考えられた. Temporal profile の詳しい分析が, これらの鑑別診断に有用と思われる.2) I型すなわち老年痴呆の20%に, 末期に脳血管障害の合併を認めたが, これはIII型 (混合型) とは区別すべきであると考えた.3) II型すなわち脳血管性痴呆は, 従来, 脳動脈硬化性痴呆とよばれて来たが, 脳血管性痴呆とよぶのが妥当である旨を指摘した. またこの型の痴呆の8割は脳卒中後痴呆であり, また卒中発作がなくとも老年痴呆とは異なる神経症状を呈するものが大部分で, 神経症状なしに高度の痴呆を徐々に示すような脳血管性痴呆は, たとえあるにしてもまれと思われる.4) 脳血管性痴呆では, 左片麻痺ないし左麻痺優位の両側性麻痺に, 精神症状を呈する例が有意に多くみられた.5) Transient global amnesia をくり返した後に, 脳血管性痴呆に至る例のあることを指摘した.6) 混合型痴呆は, その精神症状の出現頻度においても, 老年痴呆と脳血管性痴呆の中間に位した.7) 老年痴呆は脳血管性痴呆に比し, 俳徊, 無意味な多動, 日中の独語, 大声, 濫集癖が有意に多く, 逆に情動失禁は脳血管性痴呆に多くみられた.8) 混合型痴呆を狭義に用いるべきことを述べ過去の剖検例の結果と併せ考え, 老年痴呆と脳血管性痴呆がこの3型の痴呆のそれぞれ35~40%, 残りが混合型であることを述べた.

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