N-Glycosylation in Insects Revisited.

Abstract
昆虫細胞とバキュロウィルスの系による組換え体糖タンパク質を産生させる生物工学的技術が注目される中で、昆虫におけるタンパク質グリコシル化に対する興味が高まっている。昆虫は、普遍的に存在する高マンノース型糖鎖に加えて哺乳類や植物の糖タンパク質には見られないユニークな構造を持つN型糖鎖を産生する。しかしながら、アスパラギンに結合した根元のGlcNAcがα1→3でフコシル化される等、植物糖タンパク質との構造上の相同性も見られ、その結果植物と昆虫の糖タンパク質間で免疫学的な交叉反応が見られることがある。 N型糖鎖の生合成の初期段階は、全真核細胞を通じて非常に良く保存されているようであり、昆虫もその例外ではない。即ち、小胞体において14糖Glc3Man9GlcNAc2がドリコールからタンパク質に転移され、次いで脱グルコシル化される。さらに正しくフォールディングがされなかった糖タンパク質に対しては、それのみに働くグルコース転移酵素によって一過的な再グルコシル化が起こる。その後、マンノシダーゼの刈り込みによって種々の高マンノース型糖鎖が作られ、それらはやがてGlcNAc転移酵素Iの作用を受ける。この段階において糖鎖はα-マンノシダーゼIIの基質となりうる構造に変化する。また細胞や組織によって異なるが、GlcNAc転移酵素IIやα1→3あるいはα1→6のフコース転移酵素が登場してくる。少なくともミッバチにおいては、GalNAcβ1→4(Fucα1→3)GlcNAcという分枝構造の形成に関与する糖転移酵素群も存在する。またイナゴには糖ではない置換体である2-アミノエチルホスホン酸基が見出されている。N型糖鎖に働くガラクトース転移酵素、あるいはシアル酸転移酵素の活性は今までのところ確認されていない。 現在多くの昆虫および昆虫由来の細胞系において、GlcNAc転移酵素Iの作用によって付加されたGlcNAc残基は、最終的に膜結合型でアンテナ鎖特異的なβ-N-アセチルグルコサミニダーゼによって除かれることが分かってきた。

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