Abstract
新合成抗真菌剤clotrimazoleの作用機作をCandida albicansについて追究した。 本剤はC. albicansに対し0.5∼4.0μg/mlの最小発育阻止濃度(MIC)を示す。6713株を主要試験菌として用いた結果によればMIC (2μg/ml)附近では静菌的に,高濃度(20μg/ml以上)では殺菌的に作用する。細胞浸透圧抵抗性に対しまつたく影響せず,細胞内部呼吸,分離したミトコンドリアの酸化能およびリン酸化能を阻害しない。しかし,殺菌的濃度で乾燥菌量を減少させる。発育細胞による蛋白,RNA, DNA,脂質,壁多糖体の合成を阻害する。その程度は蛋白およびRNAの合成に関し,最も著しく,無細胞蛋白合成系に対しては無効である。本剤処理菌体の化学組成を無処理菌体と比較すると,RNA含量の低下が顕著である。細胞粗抽出液に本剤を加えてもRNA分解は促進されない。本剤は菌体内リン酸化合物およびカリウムイオンの遊出を速やかに亢進する。 以上の成績から本剤の一次作用が細胞の透過性の変化にあり,従つて細胞膜に作用点をもつことが示唆される。