Studies of inflammatory pain response: Related pain producing substance and endogenous opioid system.

Abstract
ホルマリンテストを改良した新しい炎症性疼痛モデルを作製した.マウス後肢足臆下にformalin(0.5%, 25 μl/paw)を投与し,その際に起るlickingとbitingを指標として疼痛反応を測定した.注入直後より5分内に出現して消失する一過性の強い疼痛反応(第1相: F相)がまず得られ,その後15~20分をピークとする持続時間の長い反応が再出現する(第2相: S相),極めて特徴ある二相性のパターンが得られた.morphine,ethylketocyclazocine,ketocyclazocine,pentazocineなどの中枢性鎮痛薬は,このF,S両相を用量依存的に抑制した.aspirin,oxyphenbutazone,dexamethasoneのような末梢に作用する薬物は,S相のみを,またaminopyrine,mefenamic acid等の中枢,末梢双方に作用点をもつとされる薬物では,両相を抑制するものの,S相をより強く抑制する傾向を示した.(D-Arg1, D-Pro2, D-Trp7,9, Leu11)-substance P(SP拮抗薬)投与は,F相のみを特異的に抑制した.Des-Arg9-(Leu8)-bradykinin(BK拮抗薬)は,F,S両相を有意に抑制した.またcompound48/80前処置やindomethacinはS相のみを抑制した.これらのことから,F相ではSPとBKが,S相ではhistamine,BK,PGが,それぞれ関与しているであろうと考えられた.またnaloxoneにより疼痛過敏が,bestatinにより鎮痛が,それぞれS相において観察されたことから,formalin刺激により内因性オピオイド活性が高まり,特にS相において疼痛制御に働いていることが示唆された.またnaloxone(muタイプ)とWin 44,441-3(kappaタイプ)のmorphine拮抗作用の違いを調べた実験から,疼痛制御機構において,F相にはmuタイプ,S相ではkappaタイプのオピオイド受容体が主体的に関わっていることが考えられた.以上のことから,F相は主としてformalinによる神経終末の直接刺激に起因するsubstance P由来の疼痛であり,S相は続発する炎症反応に由来するものと仮定して,種々の考察を行なった.