PROPERTIES OF ALA-D (δ-AMINOLEVULINIC ACID DEHYDRATASE) AND THE EVALUATION OF LEAD EXPOSURE USING HEAT ACTIVATION

Abstract
鉛被暴の指標として用いられる血球ALA-D活性測定にともなう難点を解決する目的で, この酵素の性状を検討し, より有効な鉛被暴評価の方法を開発した. Triethanolamine-HCl bufferを用い, この酵素の至適pHを求めると, 鉛被暴者ではpH 7.0と正常者のpH 7.2~7.4にくらべ低い.pH 7.0以下の低いpH 領域では両者の活性に大きな差異が認められないが, pH7.2~7.8の高いpH領域で鉛被暴の影響が顕著に認められた.しかし, 酵素液の加温処理 (60℃, 5分) により, 鉛被暴者の酵素で活性値回復がみられ, 高いpH 領域での両者の活性の差異が消失して, 至適pHも同一となる.さらにこの処理により得られる両者の酵素はほぼ同一のKm値とVmax値を示し, この酵素の鉛被暴による阻害は非拮抗型と考えられる. 両者の酵素が加温処理により同一の態様を示すことにもとづいて, 処理後の活性値を基準に未処理の活性を表現することにより鉛被曝の評価が可能であるか否かを検討した.加温処理した酵素の活性 (吸光度) を100% とし未処理のそれの比を加温効果値 (VHE) とした. ALA-D活性値 (ALA-D (U)) は正常者で30~80Uの分布を示すが, 臨床各種疾患によっても変動するため, 鉛被暴のないものでは10~120Uの範囲となる.鉛作業者の活性値分布は5~80Uで, 前者と異なる活性値幅は5~10Uとせまい.これに反し, ALA-D加温効果値 (ALA-D (%)) では正常値幅が各種疾患患者を含めても60~110%となり, ALA-D (U) に比してせまく, 60%以下となるのは鉛作業者の場合に限られる.すなわち, VHEを用いることにより, 先天性および鉛被暴を除く後天性の影響を除外し鉛被暴のみの評価が可能となる.血液鉛とALA-D (%) との相関もr=-0.959となり, ALA-D (U) のr=-0.893に比しすぐれている.血液鉛の15, 20, 30μg/1009が, 60, 50, 40%にほぼ対応し, このような低濃度鉛被暴者を非被暴者から区別するのにきわめて有用な方法である.さらに, ALA-D (U) が採血後の保存により著しく活性値の低下をみるに反し, ALA-D (%) では採血後4℃に保存すれば2週間安定である利点もあり, 一時に多数検体を採血するスクリーニングテストとして適している.

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