Muricide induced by thiamine deficiency in the rats

Abstract
雄ラットを用いてビタミンB1欠乏飼育を行ない飼育経過にともなって情動行動の変化を正常群,pair-fed群と比較検討し,あわせて情動行動と関連性が示唆されている脳内ポリアミン含量,スペルミジン(SPD)およびスペルミン(SPM)についても検討を加えた結果,次のような実験成績が得られた.1)muricide反応はビタミンB1欠乏群で飼育7日目より出現し,経日的に出現率の増加がみられ,飼育14日で20%,飼育21日で47%,飼育28日で61%,飼育30日で78%であり飼育30日までに2例の死亡が同時に観察された.Pair-fed群では飼育14日で1例出現し飼育30日で15%の出現率であった.ビタミンB1欠乏ラットにみられるmuricide反応の特長はかみつく部位が一定しないこと,mouse-killingはするがmouse-eatingまでにはいたらないことである.マウスの死体に対しては取り除くのに激しく抵抗を示したがチョークやクギなどにはかみつくことはしなかった.2)thiamine hydrochloride 1mg/kg i.p.投与のmuricide反応に対する回復効果は欠乏飼育30日および欠乏飼育21日投与においても認められなかった.しかし,飼育21日投与群では投与後1日で55%の出現率であり飼育30日投与群の1日後の100%と比較して有意な低下が認められた.3)情動スコアについてはビタミンB1欠乏ラットにattack responseの上昇が飼育28日で認められた以外著明な反応は認められなかった.4)ビタミンB1欠乏ラットのmuricide反応に際してはマウスに対するlicking,mountingが経日的に減少し飼育末期では著明に低下した.5)脳内ポリアミン含量はビタミンB1欠乏群の飼育30日において正常群,pair-fed群と比較し有意な低下が認められた.また,飼育21日にthiamine hydrochloride 1mg/kg i.p.投与し飼育30日で断頭・定量を行なうとビタミンB1欠乏群のポリアミン含量は正常レベルまで回復した.この時点でのkiller-rat,non-killer-ratのSPD値,SPM値には有意な差は認められなかった.